兵頭二十八『有坂銃ー日露戦争の本当の勝因ー』を読んだ感想文
有坂銃ー日露戦争の本当の勝因ーを読んだ。
だいぶ前に買ったけど銃のスペックと性能の話に興味がなさ過ぎて長らく放置していたのを今更読んだ。いや、小銃の装填機構の話とかされても知らね~~~っていうか常識が死んでいるので一行に知らん単語が3個とか出てくる。辛すぎ。
まあでもそんなことを言っていてはいつまでも「力とは美です」を未消化の状態から脱却できないし、それは悲しい。銃火器を好きな気持ちは全くわかんないけど、鶴見が銃火器好きって言うからには共感とはいかずとも理解ぐらいはしたい。
そう思って頑張って読んだ。無知無教養すぎて半分以上分かってないけど、有坂閣下の設計思想というか、兵器開発者の目指すところみたいなのはちょっと摂取出来た気がする。
まず「力とは美です」って鶴見は言ってたけど、別に兵器に求められるものって殺傷能力だけじゃないんだなって思った。力だけあってもダメで、安全性、携行性、加工性、汎用性、生産コストにメンテのしやすさとか、色々考えて妥協しながら作んないとダメなんだよねっていう。へー、そうなんだ。まあ、確かに、自動車だって別にめっちゃ速い車作ればいいとかじゃないもんね。
となると有坂閣下の設計思想は「力とは美です」とは少し違うところにある気がした。やっぱり設計者的にはいかに量産しやすいかとか価格を抑えるかとかそういう視点が大いに入ってるものであって、「製品単体での性能が素晴らしいから美しい」っていうのは使用者やファンの視点だな、みたいな。
砲弾一つ作るにしても、先端の尖った部分の加工は大変だけど、後ろの円筒状の部分は比較的楽に削れる。だから有坂閣下は砲弾の先端と後部を分けて設計し、先端は良い工作機械を持っている工場、後部はそうでもない工場に別々に発注して生産効率を上げた。という話が書いてあって、そんなことまで考えて作ってるんだなあって思った。
有坂閣下は作る人のことも使う人のことも両方考えて設計しているし、一方で「力とは美です」って鶴見の言葉は使う人の言葉なんだなって。
私は製造プロセスが効率的であることも含めて工業製品を美しいと思っていたので、兵器が美しいっていうのもそういう話かな~~って勝手に解釈してたが、全然そういうことではなかった。
鶴見が有坂閣下の作品を褒めるのはどこまでも使用者の意見であって、鶴見は有坂閣下の作るもののファンなんだなあってめっちゃ思った。だって、いかに戦争に役立つ兵器か評価する指標は「力とは美」とかじゃなくて、もっとコストとか加工性とか色々だ。そこで「強いものは美しい」って基準で評価する時点で、合理じゃなくてほんと愛。愛です。どこまでも愛。鶴見は合理じゃなくて愛の男なんだって事実、何回噛みしめてもドキドキする。
兵器の諸元とか機構とかの話を見て銃火器への愛が理解できたかというと、結局理解はできなかったんだけど、銃火器への愛、いつか分かりたい。